漏斗胸とは?

漏斗胸(ろうときょう)とは、胸の中央(胸骨と肋骨の一部)が内側にへこんで見える先天性の胸郭変形です。出生時から見られることもありますが、成長とともに目立ってくることが多く、特に思春期に顕著になります。
見た目の問題だけでなく、へこみの程度によっては、心臓や肺が圧迫されることで呼吸がしにくくなる、運動時に疲れやすい、などの影響が出ることもあります。

専門ドクターがわかりやすく解説

「漏斗胸ってなに?」
  • 漏斗胸のある胸部

    漏斗胸のある胸部

    胸の中央が内側に「漏斗(ろうと)」のようにへこんでいる状態です。


    • 漏斗胸の胸部断面図
      漏斗胸の胸部断面図:
      胸骨が内側に陥没し、心臓が左側に押し寄せられている状態を示しています。
      (肺が圧迫されることもあります)
  • 正常な胸部
    正常な胸部

    正常な胸郭の形。
    胸骨と肋骨が平らに近い状態です。


    • 正常な胸部断面図
      正常な胸部断面図:
      胸骨が平らで、心臓や肺が標準的な位置にある正常な胸部の断面図です。

どんな治療?

診断のステップ

漏斗胸の診断は、見た目の評価に加えて、次のような検査を通じて行われます。

  • 問診・視診

    胸のへこみの程度を確認し生活上の困りごとを伺います。

  • 胸部CT検査

    胸の内部構造を確認します。特に心臓や肺への圧迫の程度が治療方針に重要です。

  • ハラー指数

    胸のへこみの深さを数値化した指標です。一定以上の値になると、手術の対象になることがあります。

赤い矢印はハラー指数の計測ラインを示しています。

赤い矢印はハラー指数の計測ラインを示しています。

CT画像をもとに胸の横幅と胸骨のへこみ具合を計測し、ハラー指数を算出します。

ハラー指数が3.25 を超えると手術の対象になることがあります。また、ハラー指数は低いほど、へこみの程度は重度と診断されます。


専門ドクターがわかりやすく解説

「手術を受けるかどうか
迷っているあなたへ」

手術の流れ

漏斗胸の手術には、大きく分けて次の2つの方法があります。

手術法

ナス法

ラビッチ法

特徴

胸の中に金属のバーを通して内側から押し上げる

へこんだ胸骨の一部を切り、矯正する

切開の大きさ

小さい(両脇の2か所)

やや大きい(胸の中央)

対象年齢

胸郭の柔軟性を有する時期が推奨される(8-20歳位)。骨が硬くなる成人例ではラビッチ法を併用する。

ナス法より低年齢での治療が可能。骨が硬くなる成人例ではナス法と併用される。

メリット

胸郭の厚みが立体的に形成されることから内臓器への圧迫が緩和される。傷が目立ちにくい。

年齢や領域に影響されず、へこみの改善が期待できる。重症例にも対応しやすい。

デメリット

数年後にバーの抜去手術が必要になる。胸郭下部の突出変形が強い場合は、完全に矯正できないことがある。

手術時間がナス法に比べて長い。胸の中央にやや長めの傷あとが目立つ場合がある。胸板が厚くならず扁平になりやすい。

いずれの方法も、全身麻酔のもとで安全に行われる手術です。
年齢やへこみの程度、生活スタイルに応じて、最適な方法を選びます。

専門ドクターがわかりやすく解説

「保護者の方へ:手術を決める前に知っておきたいこと」

ナス法とは?

ナス法は、胸のへこみを内側から持ち上げる内視鏡下の低侵襲手術です。2〜3か所の小さな切開をわき腹に入れ、胸の内側に金属製の胸部矯正用バーを通して、胸骨を持ち上げることで胸の形を整えます。


手術の流れ:
  • 胸の中に内視鏡(小さなカメラ)を挿入し、内部の状態を確認します。
  • 胸骨の裏側に沿って、湾曲させたバーを挿入します。
  • バーを180度回転させることで、へこんでいた胸が内側から押し上げられます。
  • バーを2~3年間体内に留置し、その後の手術で取り出します。
特徴:
  • 切開が小さく、体に優しい手術として評価されています。
  • 骨や軟骨を削らないため、術後の成長にも対応できます。
  • 傷あとが目立ちにくいため、術後の見た目に配慮された方法ともされています。
  • 小さな切開部から、バーを通すルートを作成します。
    小さな切開部から、バーを通すルートを作成します。
  • 胸の裏側を通して湾曲したバーを挿入し、180°ひっくり返すことで、胸の内部から押し上げて矯正します。(右下の断面図は、術後に胸骨が自然な位置へ戻った状態を示しています)
    胸の裏側を通して湾曲したバーを挿入し、180°ひっくり返すことで、胸の内部から押し上げて矯正します。
    (右下の断面図は、術後に胸骨が自然な位置へ戻った状態を示しています)

ナス法で手術を受けたら

ナス法で手術を受けた後は、以下のような流れで回復していきます。

入院期間

おおよそ 7 ~ 10 日ほど。

術後の痛み

術後は数日間、病院で適切な痛みの管理を行います。退院後、徐々に軽減していきます。

日常生活に復帰

個人差はありますが、退院後 1 〜 2 週間ほどで、洗顔・着替えなどの一般的な生活動作が可能になります。
ただし、バーのずれを防ぐため、術後 4 か月程度は運動に制限があり、運動の種類に応じて主治医の許可を得て再開していきます。

バーの抜去

手術から 2 〜 3 年後に抜去します。

ラビッチ法とは?

ラビッチ法は、胸の前面からアプローチし、変形した軟骨を一部取り除いて胸骨の位置を整える開胸型の矯正手術です。比較的大きめの切開を胸の中央に加えて、胸の形を整えます。


特徴:
  • ナス法より低年齢での手術が可能となります。ただし、成長にともなう再発の問題があり、定期的な診察を要します。
  • 変形した軟骨の切除により胸郭全体の可動性が上がるため、骨が硬くなった成人例ではナス法と併用することでの有効性が報告されています。
  • 比較的目立つ前胸部にやや長い切開が入ることから傷あとが目立つ場合があります。
ラビッチ法では、胸骨や肋軟骨を直接切ることで胸の形を整えます。

ラビッチ法では、胸骨や肋軟骨を直接切ることで胸の形を整えます。

よくある質問(FAQ)

  • はい。漏斗胸の診察および手術は健康保険が適応されます。小児医療費助成制度や自立支援医療制度を併用できる場合もあります。

  • はい。漏斗胸の手術は高額療養費制度の対象です。年齢や所得に応じて自己負担限度額が決まり、この自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。一時的な立替払いが不要となる制度(現物給付制度)もありますので、くわしくは現在加入されている健康保険組合やお住まいの市区町村役場までお尋ねください。

  • ナス法の場合は、通常 2 〜 3 年後に抜去手術を行います。抜去手術には数日間の入院が必要になります。

  • 個人差はありますが、術後しばらくは胸や背中の張り感、違和感、動作時の痛みなどを感じることがあります。
    特に、体を大きくひねったり、仰向けで寝る際に不快感を覚える方もいらっしゃいます。ただし、時間の経過とともに体が慣れ、多くの方は日常生活に支障なく過ごせるようになります。


    【ポイント】
    スポーツや運動の再開は、主治医と相談のうえ段階的に行います。
    主治医から指導された日中や就寝時の姿勢の工夫により、不快感の軽減が期待されます。
  • 激しい衝撃を受けた場合、体内のバーがずれたり、周囲の組織を刺激する可能性がゼロではありません。
    特に胸を強く打つような転倒や事故には注意が必要です。通常の生活動作や軽い運動であれば、過度に心配する必要はありません。


    【注意点】
    接触が多いスポーツはバーを抜くまでできません
    バーがずれるなどの異常が疑われる場合は、すぐに医療機関を受診してください
  • はい。漏斗胸の手術により一定額以上の医療費を支払った場合、医療費控除の対象になります。
    手術費用、入院費用、通院時の交通費(公共交通機関の利用)などが含まれます。確定申告により、所得税の一部が戻ります。


    【ポイント】
    ご家族の分も合算できます(生計を同一にしている場合)
    美容目的の手術は対象外ですが、漏斗胸手術は医学的必要性が認められているため対象になります。

    詳しくは国税庁の「医療費控除」のページをご覧ください。
    国税庁医療費控除の概要(外部リンク)

    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
  • ご加入の保険内容によりますが、「入院給付金」や「手術給付金」の支給対象となるケースもあります。


    【確認ポイント】
    保険契約時に「漏斗胸」の既往歴について申告していたかどうか
    漏斗胸手術が給付対象手術として登録されているか

    事前に保険会社に手術名・入院期間などを伝え、給付対象か確認されることをおすすめします。

    ※当サイトでは個別の保険適用可否についてはお答えできません。
    詳細はご契約の保険会社へお問い合わせください。